フジスター男女差別賃金裁判に寄せて その1

同じ仕事をしていながら女性であるからというだけで賃金や手当について差をつけられたらあなたはどう感じますか?
「これはおかしいのではないか?」とふと思ったごく普通の女性がもんだ提起をしたことから始まりました。

この裁判は日本橋にあるアパレル業、フジスター株式会社において20年間勤務した原告が、在職中、女性であることを理由として、賃金、賞与、手当において男性従業員より低く抑えられてきたのは不法行為であるとして損害賠償を求めたものです。

始めの一歩

フジスター(株)では住宅手当、家族手当が支給されていましたが、それは男性のみでした。同じ条件で同じ年であっても上司に掛け合うと「女には手当は付かない」といわれました。また男性は10年勤続でもれなく主任に昇格して主任手当がつきました。女性で過去、主任になった人はいません。後から入ってきた男性が次々と主任に昇格していくのを見ているだけでした。こんな状況の中、女性正社員7名が労働組合を立ち上げ会社に通告しました。(2007年6月)フジスターには手当や昇格だけでなく賃金体系や社風にも男女差別がありました。何とか改善して気持ち良く会社のために働きたいそれが私達の共通の思いでした。

不当労働行為

原告は労働組合を会社に通告してから、わずか半年で当時廃部が噂されていた品質・開発部に配転されました。又、当時の専務からは、あからさまな嫌がらせを受けました。そして、60歳定年をむかえ雇用延長を希望しましたが雇い止めになりました。(2009年5月)他の定年の男性は雇用延長されていました。これらは明らかな不当労働行為です。


提訴

度重なる団体交渉の中で、私達は手当の差別、昇格の差別の是正を勝ち取りました。長い間有期雇用で働いてきた二人の正社員化も認めさせました。しかし賃金においては、会社は頑として認めようとしないため、原告は2009年11月30日、東京地方裁判所に提訴しました。この裁判は、労働基準法104条(同法4条)に反する女性であることを理由に不利益な取り扱いがなされてきたとして損害賠償を求めるものです。

賃金グラフ

裁判のなかで原告が入社した1989年以降に入社した社員全員の賃金台帳、及び人事調書の全てを請求しました。これによりデータ処理をして賃金を分析、グラフ表示をしました。その昇給曲線は男女の差別賃金をはっきりと表しています。

「基幹職」と「補助職」

会社は男性主体である営業職を「基幹職」、「女性職」である企画職を補助職とした上で同じ属性内での比較をすべきであると主張しました。しかし、このような管理区分はそもそも会社で制度化されていたものではなく、同じ事務職であっても男性は基幹職で女性は補助職であるなど、賃金における男女別管理を基幹職、補助職と言い変えたにすぎません。

デザイナー、パタンナー、グレイダーの仕事は、売れる服を大量生産するに至る過程の最も基幹的部分です。専門的な知識を要し、技術、技能の習得には一定の経験も必要とします。これをあえて「補助職」であるとするのは、女性の職務に対する偏見と差別です。

職務評価

原告側は営業を「基幹職」、企画を「補助職」とした区別は男女差別であるとして営業、デザイナー・パタンナー、グレーダの職務評価を実施し職務鑑定意見書を作成し書証として提出しました。(2011年12月)この職務評価はILOが2008年に発行した職務評価ガイドブックに基づき作成されたものです。

職務評価は賃金関係資料、職務の内容を記述した職務記述書、原告と被告から出されて陳述書、仕事に関して提出された証拠の一切、職務評価の為に実施されたアンケート等を総合的にみて客観性を保つようになされました。

その結果、両職種の職務評価点の比にはそれほど大きな差はなく3職種の仕事の価値は同等であると判断できるというものでした。加えて、客観的な社内での位置づけの説明や、職務や職種の分析のない職種別賃金という主張では合理的な説明が不能であること、企画職の中でも男女に差があること、会社の主張する卸売り企業であると言う実体を伴わない説明でしか職種の位置づけを説明出来ない中で営業職は男性のみ、企画職のほとんどは女性という明確な性別職務分離がある事を考えれば、それは男女別賃金であると考えられるとして結論しました。

証人尋問

2013年4月に裁判官の交代がありました。一人から三人の合議制になり、その裁判官のもとで証人尋問が二日にわたっておこなわれました。

10月16日 会社側証人であるデザイナー、元専務

11月1日 職務鑑定者、被告のフジスター社長、原告

 尋問の中では、原告側の追及に、元専務や社長は言葉に詰まる場面が多々ありました。

会社は賃金表も未整備なままで、その運用は差別的、恣意的であったことが明らかになりました。

判決

2014年7月18日、東京地方裁判所は、フジスター男女賃金差別事件について判決を言い渡しました。判決内容は役職手当、家族手当、住宅手当においては、違法な差別があったとし慰謝料を支払うよう命じました。しかし基本給や職務給、賞与については、不合理な性差別賃金であるとまではいえないとしました。
賃金については判決では、営業職は全員男性、企画職は大多数が女性であり、男女間の基本給や職務給については、昇給率によって格差が開いていく傾向は認めながらも、職種が違うということで、性差別賃金であるとは言えないと否定したのです。
職務評価については一定の合理性を認めつつも、「被告における評価という観点から適切であったといえるにかどうか疑問がのこるところであるから直ちに職種の違いをふまえても合理性を有しない不当な差別にわたるとすることは出来ないというべきである」としています。

また、判決には、「当該会社が企業としていかなる点を重視して従業員にインセンティブを与えるべきかという事柄は、企業の経営判断に属するものであり、当該企業の経営方針に照らし、一定の職種によりインセンティブを与えるという方針の元で決定することは自体は、それが職種の違いを踏まえても合理性を有しない不当な差別にわたると評価される場合に該当しない限り、違法とされるものではないいうべきである。」と書かれています。

 
この判決では、基本給及び職務給は従業員の生活を支えるための基盤としての性格を有していると認めながら、会社において男女間の賃金格差が著しいことは判断の対象から除外しています。

判決は賃金差を職種の違いに逃げていますが、同じ企画職内でも、事務職内でも男女の賃金格差があり、正社員とは給与体系が異なる契約社員同士でも手当の有無はもちろん、男女の昇給の差がみられます。

判決には、会社が企業として一定の職種(営業)にインセンティブをきかせるのは企業判断とあるが、どの職種であっても男性は一定の賃金カーブの層をなしており、年齢及び勤続年数にたいしての「年功賃金」であることを示しています。「売上額」や「能力」によるインセンティブを利かせるという性質は全くありません。

月例賃金は、男性については職種を問わず、主たる生計維持者である事を年頭において年功的に昇給させて生活を維持するに足りるだけの金額を支給することとし、女性については職種を問わず、全員、生計維持者とは異なる労働者として賃金を低額に抑制してきたのです。

フジスターの賃金格差は性差別です。この判決を受け入れることは出来ません。

控訴審

原告はこの判決を不服として2014年7月25日東京高等裁判所に控訴しました。


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by tokyo-union-TF | 2014-12-21 09:14 | 7.知っておこう!労働法

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